LLMのMoE(Mixture of Experts)とは何なのか

いよいよ今月にはGTP5が出るようですね。
なんでもGTP5は、ここで扱ってるMoEが使われているとかどうとか。

そんな先端な仕組みを、今回は取り上げてみました。

MoEについて

AIは何でもできる、万能な存在というイメージを持つ人も多いかもしれません。
でも、実際にAIの仕組みを学んでいくと「得意分野・不得意分野」や「効率的な役割分担」がいかに大切かが見えてきます。

そして、今の大規模言語モデル(LLM)などで一気に注目されている仕組みが「MoE(Mixture of Experts/ミクスチャー・オブ・エキスパート)」です。

MoEは、その名の通り「たくさんの“専門家”の中から、その場で最適な人だけを選んで答えてもらう」ことで、AIの能力と効率を同時に高める、とても面白い仕組みです。

この記事では、
MoEとは何か
実際の処理の流れ
体感して分かったこと
を、なるべくやさしく書いていきます。

MoE(Mixture of Experts)とは何か?

MoEとは「Mixture of Experts」の略。
直訳すれば「専門家の混合」ですが、AIではたくさんの専門家(エキスパート)を用意して、その都度、得意な人だけを選んで仕事をしてもらうという構造を指します。

イメージしやすいように例えると、
「質問内容によって、得意な先生に相談する」
という学校のシーンに似ています。

例えば、国語の質問なら国語の先生に、数学の質問なら数学の先生に聞きますよね。
普通のニューラルネットワーク(AIの従来モデル)は「一人の先生」が全部に対応します。

MoEは「専門家軍団」を用意して、質問ごとに最適な先生(複数もOK)だけが動くようにしているのです。

その結果、
計算効率が良くなる
無駄が少ないのでモデルを巨大化できる
多様なタスクや言語に強くなれる
というAIの理想に近づいています。

MoEの技術的な仕組み

MoEの具体的な構造はどうなっているのか、簡単に説明します。

1. 複数の「専門家」(エキスパート)を用意
AIの中に、いくつもの小さなネットワーク(専門家)を作ります。
たとえば32個、64個、最近は100個以上のことも。

2. 「ゲーティングネットワーク」で誰を選ぶか決める
ゲート役のネットワーク(Gating Network)が「今回の質問ならAさんとCさん」というように自動で選びます。
この振り分けはAI自身が学習するので、入力内容によって毎回変わります。

3. 選ばれた専門家だけが本気を出す
選抜メンバーだけが実際の計算を担当します。
全員で計算しない分、大規模でも計算資源が節約できる

処理速度も速い
それぞれの専門家が得意分野を深めやすいという強みがあります。

4. 専門家たちの答えを「重み付きで合成」して最終出力
選ばれた専門家の出力を、それぞれ重み付けして混ぜて最終的なAIの答えにします。

MoEを体感するため、実験版を動かす

理屈を知っただけでは「本当に分担してるの?」と実感しづらいものです。
そこで実際に「MoEの分担」を体験できる簡単なチャットボットのデモを作ってみました。

このデモは、質問文を入力すると
日本語の雑談→日本語専門のエキスパートが返答
数学の質問→数学専門のエキスパートが返答
のように、質問内容によって答える専門家が自動で振り分けられるようにしています。

また、「どちらの専門家がどれくらい選ばれたか(重み)」も一緒に表示されます。

実際のやりとり例

質問1:「今日は天気どうですか?」
ゲートの重み:日本語 93%、数学 7%
答え:「日本語でお答えします:『今日は天気どうですか?』ありがとうございます!」

質問2:「足し算を教えて」
ゲートの重み:日本語 25%、数学 75%
答え:「数学の答え:2 + 2 = 4」

質問3:「日本の数学教育について教えて」
ゲートの重み:日本語 69%、数学 31%
答え:「日本語でお答えします:『日本の数学教育について教えて』ありがとうございます!」

⚫︎文末にPythonコードあり。

実際に動かして感じたこと

このデモを実際に動かしてみて感じたのは、
質問ごとに専門家が自動で切り替わる
割り振りの度合いが数字で分かる
「混合」(Mixture)の意味が可視化できる
と、MoEの本質的なイメージが掴みやすくなりました。

AI内部では、これが全て数値ベクトルの計算で行われていると考えると、さらに「分担AIのすごさ」がよく分かります。

数値で見るMoE

実はMoEの内部では
入力→特徴ベクトル(たとえば文章の埋め込みベクトル)
ゲート→softmaxで各専門家の重みを計算
各専門家が数値ベクトルで「答え」を出す
それを重み付きで合成して最終出力
という流れになっています。

例えば
入力ベクトル:\[0.3, 0.5, -0.2]
ゲート出力:エキスパートA(70%)、B(30%)
エキスパートの答え:A→\[1.2, -0.5]、B→\[0.8, 1.1]
最終出力:0.7×\[1.2, -0.5]+0.3×\[0.8, 1.1]=\[1.08, -0.02]
といった計算が、舞台裏で自動的に動いています。

この計算は一見地味ですが、「専門家の混合」というMoEの本質を表しています。

MoEが活躍する最新AIの世界

今やMoEは
Google Gemini
Mixtral(Mistral AI)
Qwen2-MoE(Alibaba)
など、最先端AIモデルでも採用されています。

なぜここまでMoEが重宝されるかというと、
無駄のない分担で超大規模モデルでも高速に動く
多様な言語や分野への対応力が高まる
省エネかつ高精度なAIが作れる
といった強力なメリットがあるからです。

体感してわかった“分担AI”の力

MoEを実際に体験して一番感じたのは
「AIも人間社会のように、上手な役割分担をしている」
ということでした。

昔のAIは「全部一人でやる先生」でしたが、
MoEでは「必要な時だけ、最適なチームを作る」ことができます。

これがAIの巨大化・マルチタスク化・高効率化を一気に進めている理由なのだと実感しました。

おわりに

AIの世界で活躍する「専門家たち」。

MoE(Mixture of Experts)はまさに「チームAI」です。
これからのAIは「一人の天才」から「専門家集団」へと進化していくのでしょう。

もし興味があれば、下記に貼ってある、PythonコードをGoogle Colabなどで動かしてみてください。

数字で見ても、テキストで遊んでも、その「分担と混合」の動きが見えてくるかと思います。

この仕組みを知ると、AIの進化のスピードや、分野ごとの“専門家”の大切さがさらに実感できます。
ぜひ一度、体験してみてください。

Pythonコード
実際に入力して、日本語か数学かを判断する


import torch
import torch.nn as nn
import torch.nn.functional as F
import ipywidgets as widgets
from IPython.display import display, clear_output

# --- 日本語ワード/数学ワード
japanese_words = ["こんにちは", "天気", "ありがとう", "日本", "おはよう"]
math_words = ["数学", "足し算", "引き算", "かけ算", "割り算", "+", "-", "×", "/", "計算"]

def vectorize(text):
v = torch.zeros(len(japanese_words) + len(math_words))
for i, w in enumerate(japanese_words + math_words):
if w in text:
v[i] += 1
return v

class GatingNetwork(nn.Module):
def __init__(self, input_dim, num_experts):
super().__init__()
self.fc = nn.Linear(input_dim, num_experts)
def forward(self, x):
logits = self.fc(x)
probs = F.softmax(logits, dim=-1)
return logits, probs

class JapaneseExpert:
def reply(self, question):
return "日本語でお答えします:「{}」 ありがとうございます!".format(question)

class MathExpert:
def reply(self, question):
if "足し算" in question or "+" in question:
return "数学の答え:2 + 2 = 4"
elif "かけ算" in question or "×" in question:
return "数学の答え:3 × 4 = 12"
else:
return "数学でお答えします:「{}」の計算は難しいですね。".format(question)

class SimpleMoE:
def __init__(self):
self.gate = GatingNetwork(input_dim=len(japanese_words) + len(math_words), num_experts=2)
self.experts = [JapaneseExpert(), MathExpert()]
with torch.no_grad():
self.gate.fc.weight[0, :len(japanese_words)] += 1.0 # 日本語
self.gate.fc.weight[1, len(japanese_words):] += 1.0 # 数学

def reply(self, question):
vec = vectorize(question)
logits, probs = self.gate(vec)
expert_id = torch.argmax(probs).item()
reply = self.experts[expert_id].reply(question)
return {
"input_vec": vec,
"gate_logits": logits,
"gate_probs": probs,
"expert_id": expert_id,
"reply": reply
}

moe = SimpleMoE()

text_input = widgets.Text(
value='',
placeholder='質問を入力してください',
description='質問:',
disabled=False
)
output_area = widgets.Output()

def on_submit(sender):
with output_area:
clear_output()
q = text_input.value
result = moe.reply(q)
print(f"▼ 質問: {q}\n")
print(f"▼ 入力ベクトル:\n{result['input_vec']}\n")
print(f"▼ ゲートlogits:\n{result['gate_logits']}\n")
print(f"▼ ゲートsoftmax確率:(どちらの専門家がどれだけ選ばれたか)")
print(f" 日本語 {result['gate_probs'][0].item():.4f}, 数学 {result['gate_probs'][1].item():.4f}\n")
if result["expert_id"] == 0:
print("▼ 選ばれたエキスパート: 日本語エキスパート")
else:
print("▼ 選ばれたエキスパート: 数学エキスパート")
print(f"\n▼ MoEの最終出力:")
print(result["reply"])

button = widgets.Button(description="送信")
button.on_click(on_submit)

display(text_input, button, output_area)

こちらは、MoE本体の動きを見るためのコード


import torch
import torch.nn as nn
import torch.nn.functional as F

# --- Mixture of Expertsの本質構造 ---

class Expert(nn.Module):
def __init__(self, in_dim, out_dim):
super().__init__()
self.layer = nn.Linear(in_dim, out_dim)
def forward(self, x):
return F.relu(self.layer(x))

class MoE(nn.Module):
def __init__(self, input_dim, output_dim, num_experts):
super().__init__()
self.experts = nn.ModuleList([Expert(input_dim, output_dim) for _ in range(num_experts)])
self.gate = nn.Linear(input_dim, num_experts)
def forward(self, x):
# x: [バッチ, 入力次元]
gate_logits = self.gate(x) # [バッチ, エキスパート数]
gate_weights = F.softmax(gate_logits, dim=-1) # [バッチ, エキスパート数]
expert_outputs = torch.stack([expert(x) for expert in self.experts], dim=1) # [バッチ, エキスパート数, 出力次元]
# softmaxで重み付け和
output = (gate_weights.unsqueeze(-1) * expert_outputs).sum(dim=1) # [バッチ, 出力次元]
return output, gate_logits, gate_weights, expert_outputs

# --- サンプル入力データで挙動確認 ---
if __name__ == "__main__":
torch.manual_seed(42)
batch_size = 3
input_dim = 4
output_dim = 2
num_experts = 2

moe = MoE(input_dim, output_dim, num_experts)
# 入力(ランダム or 任意のベクトルでOK)
x = torch.randn(batch_size, input_dim)
output, gate_logits, gate_weights, expert_outputs = moe(x)

print("入力x:\n", x)
print("\nゲートlogits:\n", gate_logits)
print("\nゲートsoftmax(各エキスパートの重み):\n", gate_weights)
print("\n各エキスパート出力:\n", expert_outputs)
print("\nMoE最終出力:\n", output)

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